3つのケーキ

朝、自転車に乗ってケーキを買いに行った。外に出た瞬間「今日はいい冬の日だ」と思った。空気がピンとしていてでも日差しが暖かい。去年の今頃、同じような秋晴れの日に、婚姻届を出しに行ったことを思い出す。

シックで背筋がしゃんとしているケーキたち。無花果のショートケーキと、山羊のチーズケーキと、ティラミス。「ひとつずつじゃさみしいし、ふたつずつじゃ多いよね」と話しみっつになった。帰りは歩いて橋を2つ渡って、隅田川がキラキラしているのを見る。

大学生のころ冷やかしで占いに行った。地元の民家でおばあさんがやっているところ。友人とカフェで今日行っていいかと電話すると「はい夕方ならいいですよ」と回答された。入れ違いに年配の女性が出てきて、他にもお客がいることに安心した。

「今後の人生、山もなければ谷もないよ」と言われたことを覚えている。あのときは無鉄砲な大学生だったので、そう言われて少しだけがっかりした。

今日みたいな幸福な日が山でないならなんというのだろう。ケーキを食べて満足そうに笑う夫になった人のことを見ながら思う。

 

 

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