どうしようもなくなった夜のこと

ヤーズフレックスを毎日ちまちま飲んで、それでようやく抑えられていた感情が、なぜかまたやってきた。夫のなんでもない一言に悲しくなって家を出る。こうやって町をさまようのは何度目のことだ。自分でもなぜこんな気持ちになるのかふしぎだが頭にモヤがかかったように何も考えられない。自分の気持ちが理解できずコントロールできない。しかもあわてて出たからメガネを忘れた。

途中、せっかくならカフェにいこうかとか、せっかくならレイトショーでも観ようかとか、気晴らしになることを考えてみる。でも近所には夜営業のカフェはなく、メガネを忘れた。踏んだり蹴ったりだ。

仕方なく大きな市営公園まで歩く。夏休み最後の土日らしく、手持ち花火をたのしむ親子や学生グループがいる。そんなかなんで私はこんなとこに一人でいるんだろうなと思いながらベンチに座る。

そのまま2時間もぼーっとしたのにまだ気持ちの整理が追いつかない。が、街灯の明かりも消され行く場所もないのでしぶしぶ帰った。夫の顔も見ずお風呂に直行したらなぜか涙があふれてきて、しゃくりあげながら髪を洗う。私は泣きたかったのか、そうなのか?と思いながらも止まらない。

浴室から出ても止まらないので、濡れた髪のまま座っていると夫が来てくれ、気にかけながら髪を乾かしてくれた。「分け目がわからない」と言って貞子状態のおでこをなでまわしてくるので、ここでようやくフっと笑った。

なんだ。

なんなんだもう。

夫もたぶんそんな気持ちだろう。申し訳ない。

ホルモンに振り回されながら人は生きるしかないのか。超低容量ピルを服薬はじめてからかなり頻度は減ったが、生理のたびに家出をするしかないのか。まずは今日は寝なさいと夫に諭される。この人を一番大切にしたいのに、一番つらく当たってしまう。

 

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